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わたしのブログ

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続きです。

二階に行くと「あら、見違えちゃった。良い男になっちって、おほほー。」相当汚れたい他のだろう。お互いの気持ちも通じ合ってきた。奥様たちが「これから私たちいったいどうなるのかしら、何か商売をしてお金を稼がないと私たち死んでしまうわ。片山さんが持ってきたような海苔巻きでも作って売ってみない?」話が次第に現実的になってきた。「元手を出すから奥さんたち皆で作ってくれれば俺が売りにいくよ。」と提案した。こうなったら何かやってみなければいけない。奥さんたちは自分のお金ではないので大賛成である。

 私はいくら出したか覚えていない。ある朝、材料を色々買ってきた。米、ノリ、かんぴょう、砂糖、大連はお金さえあれば何でもあるところだ。その晩皆で作った。私も海苔巻き作りはお茶の子サイサイだ。屋台も木を集めて簡単に作り、さあ、今日は初商売、近所の通りに出て奥さんたちが作ってくれた赤い鉢巻を締めた。恥も外聞もない姿である。屋台で売ってみたが、満人たち見ても知らぬ顔だ。日本人はお金がないのか中々買わない。もっとも値段も決まってはいない。三越の前で買った値段くらいにしておいた。細巻き一本二十円ぐらいだったと思う。全部で千円くらいになればよいと思っていた。

しばらくすると、前から汚れたカーキー服を着た六、七人の少年、見れば皆、十五、六歳くらいで口の周りが白くなってうつろな目だった。「お前たち日本人だな、どうした。」と聞くと「僕たち開拓団なんだが、途中でバラバラになってしまったんだ。」すでに栄養失調になっている。
この子達を見て胸が熱くなった。「良し、お前たち、仲良くこれを全部食べろ>」と言うと「本当に食べても良い?」と言いながら蟻がたかったように全部きれいに食べてしまった。よほど腹が減っていたのだろう。今の私にはこれくらいしか出来ない。皆、顔に赤みが差してきた。「悪いことだけはするなょ。殺されるぞ。糞汲みしてでも働くんだぞ。みんなでみんなで力をあわせてやれよ。」と言い聞かせて別れた。少年たちは後ろを振り返りながら「おじさん、ありがとう、有難う。」と感謝しながら去っていった。私もこれ以上はなんともしょうがなかった。


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